2026/10/30

AI業務効率化は何から始めるか|業務の棚卸しと任せる順番

松下 和樹

AI業務効率化は何から始めるか|業務の棚卸しと任せる順番

AI業務効率化は業務の棚卸しから始めます。

日々の作業を書き出して1回あたりの時間を測り、手順が決まっていて社内で完結する作業を1つ選んでAIに任せ、外に出るものは人が確かめる線を先に引いておくのが進め方です。

ツールを先に契約してから使い道を探すと、現場で使われないまま費用だけがかかる状態になりがちです。どの作業に時間を取られているかを書き出してから、任せる作業と順番を決めます。

この記事ではMacminolのAI導入支援(NOL-AI)で使っている棚卸しの手順と、どこから任せるかの決め方、人が確かめる線の引き方を書きます。あわせてMacminolが自社の業務をAIに任せてきた順番も紹介します。

業務ごとの具体的な任せ方は「Claude Codeの非エンジニア活用事例8選」にまとめています。

何から始めるかは棚卸しで決まる

AIで効率化できる作業は会社ごとに違います。同じ業種でも誰がどの作業を何時間かけてやっているかが違うからです。

そのため最初にやることはツール選びより前の、業務の棚卸しです。棚卸しをすると次の3つがはっきりします。

  • どの作業にどれだけ時間を使っているか

  • その作業の手順と判断のしかたが言葉になっているか

  • その作業の結果が社内で閉じるのか、お客様や取引先に届くのか

この3つが分かれば、どこから任せるか、どこを人が見るかを根拠を持って決められます。

逆に棚卸しをせずに始めると、手順が担当者の頭の中にしか無い業務から手をつけてしまい、AIに手順を説明できないまま止まります。

業務の棚卸しの5つの手順

NOL-AIの無料AI業務診断では次の順で棚卸しをしています。社内でやるときも同じ順で進められます。

  1. ふだんの作業を書き出す。 担当者ごとに毎日・毎週・毎月やっている作業を並べます。メールの返信や書類の転記のような細かい作業も1行ずつ書きます

  2. 1回あたりの時間と月の合計を数字にする。 感覚で書かず、実際に何回やって1回に何分かかったかを記録します。月の合計時間が大きい作業が候補の上に来ます

  3. 手順と判断のしかたを書く。 「どのファイルを開き、何を見て、どう決めて、どこに保存するか」まで書きます。「金額が一定を超えたら上長に確認する」のような判断の分かれ目も書きます

  4. AIに任せる作業と人が持つ作業に仕分ける。 次の章の物差しで任せやすい作業・線を引けば任せられる作業・人が持つ作業の3つに分けます

  5. 効果の大きい順に並べ、最初の1つと削減の目標を決める。 月の合計時間が大きく、手順が決まっている作業を1つ選び、何時間減らすかを先に決めます

作業名・担当・頻度・1回の時間・月の合計・手順の有無・外に出るかの列が並ぶ棚卸しの表

棚卸しの表には次の項目を入れておくと、仕分けまでそのまま使えます。

項目

書くこと

作業名

請求書の発行・会議の記録・問い合わせへの返信など、1つの作業を1行で

担当

今その作業をしている人

頻度

毎日・毎週・毎月・不定期

1回の時間と月の合計

実際に測った時間

手順

書き出せたか、担当者の頭の中にしか無いか

使う情報の置き場

クラウドのファイル・メール・紙の書類など

結果の行き先

社内で閉じるか、お客様や取引先に届くか

どこから任せるかを決める4つの物差し

仕分けでは次の4つを順に見ます。4つとも当てはまる作業から始めると、最初の1つが回りやすくなります。

手順が決まっているか

毎回同じ手順で進む作業はAIに説明しやすく、結果の良し悪しも判断しやすい作業です。

録音からの議事録の作成、問い合わせへの一次返信の下書き、請求書の読み取りと転記などがこれに当たります。担当者によってやり方が違う作業は先に手順をそろえてから任せます。

結果が社内で閉じるか

社内の記録や集計のように結果が社内で閉じる作業はAIが間違えても外に出る前に人が気づけます。お客様へのメールや請求書のように相手に届く作業は下書きまでをAIに任せ、送るのは人にします。

くり返しが多く時間がかかっているか

月に1回5分で終わる作業を任せても、減る時間はわずかです。棚卸しで測った月の合計時間が大きい作業から選ぶと、効果を数字で確かめやすくなります。

使う情報がデジタルで手に入るか

AIが読めるのはデータになっている情報です。クラウドのファイルやメールに情報がある作業はすぐ任せられます。紙の書類や担当者の記憶にしか無い作業は先に電子化や書き出しが要ります。

4つの物差しで分けると、多くの作業は次の3つのどれかに入ります。

分け方

当てはまる作業

進め方

すぐ任せやすい

手順が決まっていて社内で閉じる作業(社内の記録・集計・ファイルの振り分け)

最初の1つの候補にする

線を引けば任せられる

手順は決まっているが相手に届く作業(請求書・案内文・問い合わせへの返信)

下書きまでをAIに、確認と送信を人にする

人が持つ

判断の根拠が言葉にならない作業(値決め・採用・お客様との関係の判断)

判断に使う材料の整理だけをAIに任せる

人が確かめる線の引き方

任せる作業が決まったらAIが担う範囲と人が確かめる範囲を始める前に文章にします。NOL-AIでは次の考え方で線を引いています。

  • 外に出る操作は人が確かめてから行う。 メールの送信、SNSへの投稿、Webサイトへの公開など、相手に届く操作は人が確認してから実行する形を基本にします

  • 確認なしで動く範囲は社内向けの作業に限る。 社内の記録や集計のように、間違えても外に出ない作業だけを自動で回します

  • 金額・宛先・日時は人の目を通す。 間違えたときの影響が大きい項目はAIが作ったものを人が読んでから使います

  • 決めた線はAIが毎回読める場所に書いておく。 口頭で伝えた決まりは次の作業で引き継がれないことがあるので、文章のファイルにして作業の前に読ませます

Macminolでも外部への送信や公開(X・LINE・メール・Webサイト)は下書きや予約の準備までをAIに任せ、最後は代表が承認してから出しています。

下書きや集計はAIが担い確認や送信は人が確かめるという分担の図

Macminolが自社の業務をAIに任せてきた順番

Macminolも社内の業務を少しずつAIに任せてきました。振り返ると結果が社内で閉じる作業から始め、人が直してから使う作業、お金や相手が関わる作業へと進んでいます。

段階

任せた作業

人が持ったこと

1. 社内で閉じる記録と集計

LINE公式アカウントの友だち数の記録、お客様から受けた質問と回答の整理、会議の文字起こしの清書

確認事項への回答、お客様への返信

2. 人が直してから使うたたき台

ホームページ制作の構成書、提案書、スライドの資料

中身の判断と直し

3. お金が動く書類

請求書と領収書の発行、受け取った領収書の整理

金額の確認、送付、経費の判断

4. いくつかの作業がつながった流れ

朝の時間割づくりとカレンダーへの登録、社内文書の確認と直しの記録、集客の数字をまとめた画面の毎朝の更新

何をやるかの決定、指摘と承認

Macminolが自社の業務をAIに任せてきた4段階の順番を左から右に並べた図

社内で閉じる作業で手順の書き方を覚えた

最初に任せたのは間違えても外に出ない記録と集計でした。外に出ない作業なので、手順をどこまで細かく書けばAIが迷わないか、直してほしい所をどう伝えるかを試しながら固められます。

ここで固めた書き方を2段目以降の作業でも使っています。

お金が動く書類は決まりを先に固めた

請求書と領収書はひな形をコピーしてから書き込む、番号を自動で振る、保存先のフォルダを決めておくといった決まりを先に文章にしてから任せました。金額の確認と相手への送付はいまも人がやっています。

仕組みの中身は「Claude Code経理自動化の実例」で紹介しています。

手で回してから仕組みにした

Macminolでは仕組みは手で何度か回して要ると分かってから作る、という決まりを置いています。先に専用の仕組みを作ると、使われないまま残ることがあるからです。

最初の数回は人が横で見ながらAIに作業させ、手順が固まってから毎回同じ形で動くようにしています。

1つの作業から複数の業務へ広げる

最初の1つが回ったら範囲を少しずつ広げます。作業を1つずつ任せて回る形ができてから、それらをつないで1つの業務の流れにし、最後に判断を挟む複数の業務をまたぐ仕組みにします。

いきなり複数の業務をまとめて任せると、どこで止まっているのかが分からなくなります。

NOL-AIでも作る範囲を「ひとつの作業」「ひとつの業務の流れ」「複数の業務」の3段階に分けています。範囲ごとの期間と費用は「AI導入の費用相場」にまとめています。

社内に広げる順番も決めておくと進めやすくなります。

NOL-AIのお客様のWeb制作会社、株式会社ラジャ様では1ヶ月目に代表が自分で使い方を覚え、2ヶ月目に社員へ広げ、3ヶ月目には自分たちで回せる状態になりました。

効果を確かめるために始める前に決めること

効果は始める前の状態と比べないと分かりません。最初の1つを任せる前に次の3つを決めておきます。

  1. 今の時間を記録しておく。 棚卸しで測った1回あたりの時間と月の合計を、比べる元として残します

  2. 削減の目標を1つ決める。 「この作業の月の合計時間をどこまで減らすか」を数字で決めます

  3. 測り方を決める。 誰がいつ時間を記録するか、何週間回してから判断するかを決めます

使い始めたら目標と今の数字を突き合わせ、減っていなければ手順やAIへの指示を見直します。

AIを入れたのに誰もどれだけ楽になったか答えられない状態はこの3つを決めずに始めたときに起きやすくなります。

よくある質問

Q. ツールを先に選んではいけませんか。

A. 選ぶ順番としては棚卸しが先です。任せる作業が決まると、必要なのが文章を作るAIなのか、ファイルや外部サービスを操作するAIなのかが決まり、ツールを選びやすくなります。

Q. どの業務から始めると進めやすいですか。

A. 議事録の作成、問い合わせへの一次返信の下書き、請求書の読み取りと転記のように、手順が決まっていて結果をすぐ確かめられる作業から始めると進めやすいです。どの作業が当てはまるかは棚卸しをしてから決めます。

Q. 手順が担当者の頭の中にしか無い業務はどうすればよいですか。

A. 先に担当者と一緒に手順を書き出します。作業を横で見ながら「何を見て、どう決めたか」を聞き取り、文章にしてからAIに任せます。書き出す作業そのものにAIを使うこともできます。

Q. すでにAIツールを入れていますが、使われていません。

A. 使われていない作業について、任せる作業の手順と人が確かめる線が決まっているかを、設定と手順の両方から見直します。棚卸しをやり直し、最初の1つを決め直すところから立て直せます。立て直しの順番は「AI導入で中小企業が失敗する原因7つと防ぎ方」に書いています。

Q. 費用はどれくらいかかりますか。

A. NOL-AIでは作業を1つ任せる仕組みづくりが50,000円〜(税別)、定例で一緒に進める月額のご支援が月50,000円〜(税別)です。どちらもAIツールの利用料は実費で別途かかります。棚卸しから削減見込み時間のご提示、お見積もりまでは無料のAI業務診断で行っています。進め方ごとの相場は「AI導入の費用相場」で紹介しています。

業務の棚卸しをMacminolに相談する

MacminolのAI導入支援「NOL-AI」では無料のAI業務診断でいま時間を取られている業務をお伺いし、AIに任せられる業務と削減できる見込み時間をご提案しています。

契約は不要で、オンラインで完結します(月10社限定)。どの業務から始めるか、どこを人が確かめるかを決めたうえで、進めるかどうかをご判断いただけます。

NOL-AI(AI導入支援)と無料AI業務診断の内容を見る

この記事を書いた人

Macminol株式会社 代表

松下 和樹

兵庫県明石市で中小企業のホームページ制作、LINE公式アカウントの構築と運用、AI導入支援を手がける。請求書の発行や会議の記録など自社の業務の多くをAIに任せて回し、その運用の決まりをもとにお客様のAI導入を支援している。

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